約1億5000万円の機械式サイレントアラーム時計。その仕組みを解説しよう

約1億5000万円の機械式サイレントアラーム時計。その仕組みを解説しよう

難解極まりない超複雑な機械式時計の仕組みを“優しく”解説する『超弩級 複雑腕時計図鑑』がMEN’S EX特別編集によって発売に。ここでは、その中身をピックアップしてご紹介する。

静寂な空間を邪魔せず時の訪れを無音で知らせる

オーバル型のダイヤルは、エアバス・コーポレート・ジェットが製造するプライベートジェットの窓を模す。ハイブランド パロディ 通販同社とのコラボ第2弾は、第2時間帯を示すグリーンのUTC針と、アラーム機構とが備わるトラベルウォッチ。4-5時位置のインダイヤルがアラーム用で、設定した時間になると音が鳴る……のでは、ない。リシャール・ミルは、初のアラーム機構から音をなくした。代わりに時の訪れを知らせるのは、携帯電話のマナーモードから想を得たバイブレーション。このモデルのオーナーが利用するであろうファーストクラスの機内でアラームが作動しても、静寂を壊すことはない。

バイブレーションを担うのは、ケースバックの下部に設置されたマイクロローターに似たホワイトゴールド製の回転錘。これが設定時刻になると、5400rpmで回転して時計全体を振動させる仕組みだ。振動させる原理は、実にシンプル。しかしこのモデルが搭載するトゥールビヨンにとって、連続する内部振動は多大な悪影響となる。着用者が確実に振動を感じられ、かつその振動がムーブメントに害を及ぼさないための構造と素材との開発には、実に5年の歳月を要したという。

地板とブリッジは、軽くて振動しやすく、優れた弾性で衝撃を吸収するチタン製に。チタンに1.8㎜厚のカーボンTPT®を重ねてベゼルを構築することで最適な重量比強度を得て、アラームの振動をムーブメントではなく手首へと伝達するようにもなっている。さらに操作性にも優れ、アラーム用の香箱は、8時位置のボタンを押すだけで巻き上げられる仕組みに。アラームとUTC針の設定は、5ポジションになったファンクションキーセレクターによるリューズで操作できる。そしてオーバーサイズデイトは、リューズ上のプッシュボタンで調整できる。

Point 1

5400rpmで回転して時計全体を振動させる

バイブレーションを担うローターは中央のスリットに振り子のパーツが備わり、高速回転する際にはこれが振動を増幅する。振動がムーブメントに悪影響を及ぼさないよう、ローターの位置も慎重に設定された。アラーム機構は、すべてムーブメント下部に集約した。

　Point 2　

8時位置のボタンを押すだけで巻き上げられる

アラーム用の香箱を、専用ボタンで巻き上げる設計もユニーク。12回押すだけで完全に巻き上げられ、12秒間アラーム用ローターを高速回転させる。絶妙なカーブで腕にフィットするトノー型ケースは、振動を手首へと伝達するのにも有利に働く。造形も、機能なのだ。

　Point 3　

5ポジションになったファンクションキーセレクター

リューズ操作の切り替えは、先端のボタンで操作する。既存のファンクションキーセレクターは、ニュートラル・巻き上げ・針合わせの3ポジションだったが、このモデルではアラームとUTCが加わり、5ポジションに。どのモードなのかは、3時位置の窓で知らせる。